
更新日:2015年11月5日(木) 【nakata Labs なかたラボ】
一段と寒くなってきた尾道です。気づけば今年も残り2カ月を切りました。月日が経つのは早いですね…
先日、ワークショップ「色の標本箱」を開催しました。
記録や保存としての要素もありながら、まるで箱の中だけ時間が止まってしまったような、ロマンチックな要素も持ち合わせた標本箱。
標本箱と言えば昆虫や鉱石を思い浮かべますが、今回は 展示作品に使われている 「色」 を閉じ込めてみました。
まずはじめにウォーミングアップ。水彩絵の具を使ってグラデーションになるように色を塗っていきます。
青からむらさきを経て赤へ、1つの色に水を徐々に加えていってだんだん淡い色へ。
微妙な水や絵の具の調整はなかなか難しかったです。
そしていよいよ標本を作っていきます。
どの様にして作っていくかというと…
まずパレットの上で絵具をいくつか混ぜ合わせて絵の中に使われている色をつくり、画用紙に塗ります。
風景画には描かれたときの光や、描いた場所や時間、画家の心境などいろいろな要素が含まれています。
そのため一見同じ色でも、よく見るとたくさんの色を見つけることができます。
少しづつ、いろんな色を混ぜて…
画用紙のかたちは まる や さんかく、星や花などさまざま。
そしてそれらをノートに並べていきます。
標本というからにはデータが必要です。今回は色の図鑑を参考にして、作った色の名
前を表記しました。
色の索引と照らしあわせながら…
マロングラッセ、キャラメル、カフェオレ…
フランスの色の名前は食べ物を由来としたものが多いです。
おなかがすいてきますね。
撫子、桔梗、胡桃色など、日本の色は植物を由来としたものが多いようです。
自分が見つけた色が素敵な名前だと嬉しいものです。
参加者の皆さん、研究者のように黙々と取り組まれていらっしゃいました。
そして完成したものがこちらです。
タイトルなどの作品のデータも忘れずに。
色を抽出する作業によって、
絵画が普段の顔と違う見え方で目の前に現れてきました。
完成した瞬間、 「できた―!」と歓声を上げることはなく
作業している間に小さな喜びがじわじわと蓄積し、完成した形をみて喜びを隠しきれず
にニヤニヤしてしまう、そんな静かなワークショップでした。
しかし、予想外の色を使っていることに驚いたり、
同じ作品でも、人によって選択する色が違うので、出来上がった標本が全然違う
雰囲気になったり、
この静かなワークショップ、まだまだたくさんの可能性を秘めているようです。
参加者の皆さん、ありがとうございました!
※以下の書籍を使わせて頂きました
濱田 信義 (2007) 『日本の伝統色』
城 一夫 (2008) 『フランスの配色』
城 一夫 (2011) 『フランスの伝統色』
ともに ピエ・ブックス
更新日:2015年8月30日(日) 【nakata Labs なかたラボ】
ひと雨ごとに涼しくなっている尾道です。
秋の気配を感じる8月最後の土曜日、親子ワークショップ「パピエ・コレで街づくり」を開催しました。
パピエ・コレとは、フランス語で「糊の付いた紙」の意味で、色紙や、新聞紙などを貼り付けて構成された作品や
技法のことを言います。
今回のワークショップでは、様々な種類の色紙や包装紙に加えて、
展示している作品を白黒に印刷した紙も材料として使いました。
支持体となるのはじゃばらの本のような厚紙。半立体のパピエ・コレを作ります。
小さいころドールハウスで遊んだ時のように、建物の奥行きを感じることで、より想像力が湧きますよね。
まずはじめにウォーミングアップとして、「かたちさがし」を行いました。
さんかく、しかく、かまぼこ型を展示されている絵の中から見つけます。
さんかくは屋根にたくさん隠れていました。しかくは窓や扉、かまぼこ型は絵の中を歩いている人の帽子!
みんな絵をじーっくり見て、大人が見つけられなかった小さなところまでたくさんのかたちを見つけてくれました。
少しほぐれたところで、パピエ・コレの始まりです。
なかなか聞き慣れない言葉なので、みんなはじめは戸惑うかな?と心配していましたが、
そんな私の心配はすぐに吹き飛ばされました。
子どもたちは材料を手に取った途端、どんどん手を動かし、まちづくりを始めていきました。
折り紙を切って貼り付けたり、厚紙に穴をあけて窓にしたり。
展示作品に登場する街を組みあわせたり。
お菓子の街やおおきな金色の太陽の街、雷雨降り注ぐ嵐の街。
川が流れて、船が泳いで、空には飛行機、雷、しゅりけん!…手裏剣?
ポコポコ溢れるように作り出され変わっていく街並みは、年月の流れさえも感じさせます。
なんとなかた美術館を作ってくれた子もいました!入口があって、受付があって、そして階段!
細かい所まで再現されています。
子どもたちが作ってくれた街は、カラフルだったり、いろいろな形の建物や窓があったりとっても楽しそうです。
こんな街を訪れてみたいですね。
いったいどんな人が暮らしているのでしょう。
参加者の皆さん、ありがとうございました!
子どもたちやお母さんの夏休み最後の思い出になってくれていたらうれしいです。
更新日:2015年7月15日(水) 【nakata Labs なかたラボ】
今日は、台風が来るとは思えない青空になりました。
急に暑くなって、緑が一段と濃く感じられます。
さて、遅ればせながら先日のnakata Labsレクチャー『街とスケッチ』の様子をご紹介いたします。
開催中の展覧会は「コレクションプラス 街を描く」。
街を描けば必ず登場するのが、さまざまな建築ですよね。
そこで、建築家で、NPO法人尾道空き家再生プロジェクトの理事でもある渡辺義孝さんをお招きしました。
かつて、渡邉さんが建築家としての修業を始めたときに、師事した鈴木喜一氏から、
毎日必ずスケッチをしろ、というひとつの条件付きで約3ヶ月の旅に出されたのだそうです。
それ以来、現在に至るまで中央アジアやユーラシアなど、約50ヶ国を旅し、
それぞれの街で出会った人や建築をスケッチしてこられました。
建築の造りや細部には、どうしてそうなっているのか、ひとつひとつ理由があるとのこと。
そこに気づくには、描いてみることが一番です。
正確に描こうとしたとき、いったいどのくらい見ているのか、渡辺さんは一度数えてみたそうです。
するとだいたい4〜5秒に一回、一分間に13回だったそうです。
スケッチをしなければ、なかなかそれだけの回数、真剣に見ることはできないのではないでしょうか。
展示作品についても、いくつかピックアップしてお話いただきました。
ノートルダム寺院の正面ではなく、あえて裏側の骨組みが見えている作品。
駅を描きながら、中央部分が汽車の黒い煙でもやもやしている作品。
賑わう市場をカラフルに描き、人いきれが感じられる作品・・・。
それぞれに建築愛や、そこに暮らす人の生活や人生が感じられます。
渡辺さんのお話はまさに旅のように、フランスからアルメニア、グルジアやパキスタン、
そして陸前高田や白馬村、久留米、向島や御調のことへ、連綿と連なっていきます。
道と家並みの関係から歴史を想像したり、スケッチしながら建築の構造を読み解いたり、
都会と郊外、駅舎や教会、工場、カフェなど人が集まる場所、民家やかつて人が暮らした遺跡・・・
建築を見ること、描くことは、その街の歴史や人々の暮らしに思いを馳せることでもあるのだと感じました。
また渡辺さんは、尾道に多く残る洋風建築の調査もしてこられました。
洋風建築には、レンガ造りやアーチといったぱっと見て分かりやすいものだけでなく、
モルタルの風合い豊かな「ドイツ壁」や、屋根の角を落として優美に見せる「ヒップゲーブル」、
軒の裏に板を張る、などといった細かい特徴を持つものもあるそうです。
そんなディティールに気付くのも、スケッチをしているからこそ。
自分で描いた街のことは、忘れることなく記憶に残るのだとおっしゃいます。
そして悲しいことに、守られてきた建物だけでなく、戦火や災害で壊れてしまった建物もあります。
時には描くことができない、ためらわれるようなこともありました。
しかし、様々な事情で壊さざるを得ない建物のスケッチや図面が、建物の持ち主に心から喜ばれたというご経験も。
描かれた建築の姿は、写真や映像とはまた違うあたたかさを持った、かけがえのない記録になりうるのだと感じました。
このほかにも書ききれないほど、たっぷりお話いただきました。
渡辺さんのお話を聞いたあとは、改めてじっくりと作品を見てみたくなります。
実際に普段よりも、ゆっくり鑑賞してくださる方が多いようでした。
皆様ありがとうございました!
「コレクションプラス 街を描く」 は、9月27日(日)まで開催中です。
ぜひそれぞれの街に思いを馳せながらお楽しみください。