展覧会 『はじまりのバラ ―近代絵画コレクション―』 が始まりました
更新日:2022年3月6日(日) 【展覧会】
この週末から、展覧会『はじまりのバラ −近代絵画コレクション―』 が始まっています。
開館 25 周年を記念して、当館のコレクションの特色のひとつであるバラを描いた作品のコレクションとともに、これまでの歩みをご紹介する展示です。
なかた美術館のコレクションは、もともと一人のコレクターが私的に収集した作品がもとになっています。
コレクターがかつてそうしたように、一枚一枚の作品を直感的に見ていただきたく、
今回は日本とフランスの画家たちの作品をあえて国別ではなく、一緒に展示しています。
それぞれの作品をじっくり見て、ぜひ周りの作品とも自由に見比べてみてください。
「植物画」と「絵画」を並べて展示したコーナーもあります。
植物の特徴を記録するための「植物画」と、画家たちが美術作品として創作する「絵画」は表現方法としては異なります。
しかしまず植物を観察し、研ぎ澄ませた感覚で形や色をとらえていく点は共通しています。
絵画に描かれたのはどんな品種のバラだったのか、画家たちはどのように観察して、線や色、かたちとして描き出したのか、想像がふくらむでしょうか。
あるいは植物画を、絵画を見るように美的な観点から鑑賞するのも楽しいことと思います。
構図、色彩の華やかさ、水彩画のテクニックなど、見どころがたくさんあります。
なかた美術館のあゆみを辿るコーナーでは、過去25年間の60回分の企画展のチラシやポスター、写真などをずらりと並べています。
過去の活動や展示の様子がご覧いただけます。
懐かしいものを見つけていただけると大変うれしいですし、初めての方にはこんな美術館です、という自己紹介のようにもご覧いただけるかと思います。
これからも、どうぞよろしくお願いいたします。
もともとプライベートな収集からはじまった館ならではの、親しみやすく、穏やかな展示構成になっているかと思います。
コレクターの家に遊びに行くような気持ちで、ゆったりくつろいで、楽しんでいただければと思います。
会期は2022年6月12日(日)までです。
なかた美術館では、新型コロナウイルス感染予防対策をとって開館を続けています。
ご来館の際はご協力のほどお願い申し上げます。
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・発熱や咳など体調不良がある場合は、来館をご遠慮ください。
・ご来館の際はマスクの着用をお願いいたします。
・入館時に手指の消毒と検温にご協力をお願いいたします。
・館内では会話を控え、人との距離を保ってご鑑賞ください。
・やむを得ず入館制限を行う場合がございますので、ご了承ください。
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ミュージアムレクチャー『尾道の風景と文芸誌』を開催しました
更新日:2022年2月2日(水) 【nakata Labs なかたラボ】
1月23日(日)に、「遠景の絵画」展に関連して、ミュージアムレクチャー『尾道の風景と文芸誌』を開催しました。
尾道市市史編さん委員会事務局の専門員、林良司さんを講師にお招きして、戦後の尾道で作られた文芸誌と、それにまつわるエピソードを詳しくお話ししていただきました。
レクチャーに入る前にまず、参加者の皆さんと一緒に展覧会を鑑賞しました。尾道を描いた風景画や、今回のお話の軸にもなる小林和作の絵画や関連資料を見ていただきました。
小林和作は1888年(明治21年)に山口県で生まれ、1934年(昭和9年)から亡くなる1974年(昭和49年)までの後半生を尾道で過ごした画家です。物心両面から尾道の文化振興に尽力し、尾道市名誉市民にもなりました。元々は日本画を学ぶために京都へ進学しましたが後に洋画へ転向し、尾道やその周辺、そして信州の山々の風景を描きました。
今回のレクチャーでは、小林和作が関わった『瀬戸内海』と『随想おのみち』という2つの文芸誌について学びました。
『瀬戸内海』は、戦後間もない1946年(昭和21年)から翌年にかけて、浜根岸太郎(2代目)によって発行された文芸誌です。尾道発のローカルな雑誌ですが、執筆陣には井伏鱒二や吉井勇など、当時の名だたる文豪たちの名前も見えます。表紙絵は小林和作や、須田国太郎、森谷南人子が手がけました。終戦直後の用紙難に見舞われ、わずか5号で廃刊となりましたが、大物級雑誌であったことは間違いないでしょう。
実現こそしませんでしたが、織田作之助にも寄稿を依頼していたことが、現在残っている書簡から明らかになっています。まだまだ未知の部分が多い雑誌なので、今後の研究の進展に期待が高まります。
『随想おのみち』は、1961年(昭和36年)に「尾道随筆クラブ」の同人たちによって発行されました。この、「尾道随筆クラブ」は、小林和作が1960年に主唱して有志とともに結成した団体です。『随想おのみち』には主に随筆クラブの同人たちが日常のことや尾道にまつわること、自身の考えなどをしたためた随筆を投稿していました。その他にも、俳句の投稿や絵画、書画の紹介もされ、バラエティ豊かな誌面となっていました。和作も没後に発行された34号以外は毎号投稿しており、その随筆からは和作自身の芸術観や、当時の尾道の様子がうかがえます。
本誌には、かつて計画されていた和作と菱雨という画家の「幻の二人展」に関する随筆も見えます。菱雨は、京都で日本画を学んでいた時の和作の同級生でした。卒業後は美術の道から離れ、岡山県で僧侶として暮らしました。和作と菱雨は再会した折に、二人展を開く約束を交わしましたがその後和作が不慮の事故によって亡くなり、その約束は果たされませんでした。
しかし、和作の死没から40年後の2014年に、おのみち歴史博物館にて二人展の開催が実現しました。林さんからは、和作と菱雨の関係が綴られた随筆「旅で拾った物語」(『随想おのみち』17号掲載、後藤柾留著)をご紹介いただき、2014年の二人展開催に至るまでの調査の過程についても詳しくお話していただきました。
また、小林和作と親しくした尾道の文化人たちの興味深い話も読み取ることができます。今回は林さんより、小野鉄之助、森信蔵、島居哲の3人についてお話をうかがいました。
小野鉄之助は、尾道で産婦人科を営む傍ら、絵画やスポーツなど多趣味で多芸な人物でした。文化振興にも和作と共に尽力し、「無茶会」や「五の日会」などのイベントを開催するだけでなく、後に尾道市文化協会の初代会長も務めました。そのような彼を、林さんは「総合プロデューサー」と称します。(ちなみに和作は、突飛なことを思いついては実行する小野に対して「道楽息子を一人かかえているようなものだ」と語っていたそうです。)
森信蔵は、東京で新築地劇団員として活動していましたが、終戦後に尾道へ戻り、市議会議員を務めました。ある時、総合プロデューサー・小野鉄之助が、森と志賀直哉の縁をもとに志賀の尾道での講演会を計画しました。しかし和作はそれに異を唱え、その旨を記した書簡を森へ送ります。今回は和作直筆のその書簡を実際に閲覧させていただきました。忌憚ない意見をぶつけるその文章からは、和作と森の信頼関係がうかがえます。
島居哲は、尾道市議会議員等を経て衆議院議員も務めた人物ですが、同時に茶道にも精通しており茶人としての一面も併せ持っています。島居に関しては千光寺公園での茶会の折、その度量と機転の良さを活かして、茶菓子が届かないというピンチを華麗に切り抜けたことを林さんからご紹介いただきました。『随想おのみち』18号に島居は「茶のこと」という随筆を投稿しており、彼の茶道に対する並ならぬ思いを知ることができます。
絵画や写真から視覚的に見る尾道の風景だけでなく、レクチャーで紹介した文芸誌にあるような、文章から見えてくる尾道の風景についても思いを巡らせていただけたら幸いです。
ご参加いただいた皆さま、講師の林さん、ありがとうございました!
ピアノコンサート トウヤマタケオ 『四辺は森として』を開催しました。
更新日:2022年2月1日(火) 【コンサート】
先日ピアノコンサート トウヤマタケオ 『四辺は森として』を開催しました。
尾道在住の音楽家トウヤマタケオさんの新作アルバムを記念したコンサートです。
トウヤマさんの作る音楽は、シンプルで構築的で、芯があるけど柔らかく、程よい距離感で寄り添ってくれます。
優しい音色と旋律は、どこか遠い場所や懐かしい過去へ連れて行ってくれるようでもあり、風景画の展覧会にもぴったりです。
この日は寒い夜でしたが、その分空気が澄んで、音がよりくっきりと響きます。
(写真はリハーサル時のものです)
目の前で、ひとつひとつの音が重なり合って会場に広がっていく時間は、まさにライブならではの幸せなものになりました。
そして一曲だけ、実はスタッフも小さな楽器で演奏に加わらせていただきました!
高い空に鳥がさえずり、風が吹き渡って、羊や牛たちがゆったりと草を食んでいる…そんな情景が浮かんでいたら嬉しいです。
トウヤマさんは以前はよく、その場で来場者の方といっしょに歌ったり、音を作っていったりするような演奏をされていました。
今回はスタッフが参加させていただきましたが、また多くの方と一緒に参加できる日が来てほしいです。
なお今回の開催にあたっては、広島県の基準に則って感染症予防対策を行い、トウヤマさんやご来場の皆様にも多大なご協力をいただきました。
https://www.pref.hiroshima.lg.jp/uploaded/attachment/465777.pdf
おいでいただいた皆様、あたたかく見守ってくださった皆様、どうもありがとうございました。
また、当日皆様へお渡しした招待券は券面にある日付から1年間有効です。次回やその次の展覧会も鑑賞できますので、ぜひご利用ください。
音楽鑑賞の場として、所蔵のチェンバロを中心としたバロックコンサートを定期的に開催するほか、ジャズやクラシックなど様々なジャンルの演奏家によるディナー付きコンサートも企画・開催しています。併設するフレンチレストラン「ロセアン」では、ランチ・ティータイムはもちろん、美術館閉館後もゆったりとした空間でライトアップされた庭園を眺めながらの本格的なディナーが楽しめます。