風景画の見方
更新日:2012年10月5日(金) 【nakata Labs なかたラボ】
今週は、尾道市内のふたつの小学校が観賞に来てくれました。
「風景画 fukei-ga」展の観賞です。
私達が毎日、歩きながら、走る車の窓から、目にしている「風景」。それを写真に撮るのとは違って、絵では描く人によって様々に表現することができます。
実際には無いものを描き加えたり、あるはずの物を描かなかったり、大きくしたり、色を変えてみたり・・・。
描かれた風景画は、誰にとっても等しく「風景」ですが、それぞれ描いた作家にしか見えていない世界でもあります。
だからとても面白いのですね。
なので、今回はみなさんと一緒に、その絵を描いた「作家」になったつもりで絵を見ていきました。
どんな場所から、どんな時間に、どんな道具を使って?
そして、どんな気持ちで描いたのか・・・。
大人は、まずキャプションに目がいきがちですが、良いなと思う絵そのものを、
ゆっくりゆっくり観察していると、ちゃんといろんなことが分かってくるものです。
例えば、「いつ描きましたか?」という質問ひとつとっても、
「夏の終わり頃」、「夕方のなりかけ」とか「ちょっと早い朝」などなど。
まとめでは「作家さん」を招いて、どうだったのか詳しく教えてもらいました。
土堂小学校のみなさんは、「尾道を描いた作品」について学ぶ一環として来てくれたので、尾道の風景作品に限定して見ていきました。
皆さんさすが、よく勉強して知っている場所が舞台なのもあり、細部までよく想像を働かせてくれました。
山波小学校のみなさんは、市民が立ち上げた「アート・スクール・バス」を活用しての来館です。
*アート・スクール・バスについては読売新聞産の記事が詳しいです。(http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/hiroshima/feature/hiroshima1197001129611_02/news/20101113-OYT8T00047.htm)
歩いてくるにはちょっと遠すぎますが、このバスのおかげで、ここまで来てくれました。
道中にも、車窓からたくさんの「風景」(家、川、犬、彼岸花など)を見れますしね。
こうして一緒に絵を見ることを楽しんでくれるのは、とても嬉しいですね。
美術館では、いつでも大歓迎です!これからもよろしくお願いします。
「15周年記念なかた美術館コレクション 風景画 fukei-ga」ほか
更新日:2012年9月22日(土) 【展覧会】
ぐんと秋らしくなってきましたね。
久しぶりの更新になってしまってすみません。最近のことを少しまとめてお知らせいたします!
現在、なかた美術館では 「15周年記念なかた美術館コレクション 風景画 fukei-ga」を開催中です。
コレクションの大半を占める「風景」を描いた作品を展示しています。
11月11日(日)までは「前期」、秋の風景や尾道、ヴェネツィアなどの水辺の風景を中心に。
11月15日(木)から「後期」として、一部の作品を残して大きく入れ替えます。
描かれた風景が、時間や空間を越えて、美術館の中でひっそりと訪れる人々を待っています。
すっかりおなじみ「観覧券+デザート&ドリンク」の嬉しいセットもありますので、ぜひ、ゆっくりとお過ごし下さい。
23日(日)まで第一展示室では、「子ども学芸員の旅 作品展」を同時開催しています。
「子ども学芸員の旅」のワークショップで作った作品や、子ども達が美術館をめぐった風景を紹介。
こちらは、かなりクールでキュートな展示です。
展示作業は、「子ども学芸員」達と一緒に行いました。
旅の写真のモビールづくり。
作品をつづるアルバムづくり。
「目のノート」や うちわ、カップ、人形の設置などなど・・・。
ガンタッカーやサークルカッターなど、ちょっと難しい道具にも挑戦しました。
子ども学芸員達は真剣そのもの。
大学生スタッフや、ネットワーク他館の学芸員さんも力を貸してくれました。
普段の美術館とは、ちょっと違う表情を見ることができるかと思いますので、ぜひ!
そして今日は「Kids Gallery Talk」を開催しました。
講師のChris先生に、簡単な英語で作品の世界を案内してもらいます。
作品に使われている「色」や、描かれている「モチーフ」を見つけて、一緒に英語で発音します。
木や山、舟、橋、お城や塔、鳥や牛や犬。
描かれているものの形を、ジェスチャーでかたどってみたり・・・
時刻や季節についても想像してみます。
それぞれのモチーフを、シンプルな言葉にすることで、
テーマがクリアに見えたり、逆に言葉にあてはまらないものも表現されているのが分かったりします。
Chris先生のガイドは本当に素晴らしく、子ども達もとっても楽しんでくれた様子でした。
どうもありがとうございました!
英語が分かると美術の楽しみ方もぐんと広がるので、そういう意味でも、今後も続けていきたいイベントのひとつです。(私も勉強中です。)
その他にも「nakata Labs」(ナカタ ラボ)と名付けて、わくわくするようなイベントを各種ご用意しています。
前回、大好評だったガーデントークは、秋バージョンと冬バージョンでお届けする予定です!
コンサートや、キッズワークショップも! 詳しくは展覧会のページをご覧下さい。
「OPEN STUDIO/ON AIR」 「絵画の水と地図」
更新日:2012年9月5日(水) 【nakata Labs なかたラボ】
「OPEN STUDIO/ON AIR」が終了しました。
複雑に入り組んだ、尾道の斜面地や路地に点在するアトリエ・スタジオを、
期間限定でオープンしてもらい、参加者が自由に巡るというこの企画。
本当にあっという間の、濃厚な二週間でした。
暑さと、複雑さが心配でしたが、思った以上に多くの反響をいただきました。
ものが生まれる現場を見ながら、新しい視点で尾道を歩くことで、
ひとつでもふたつでも、何か発見をしていただけたのではないでしょうか。
さて、なかた美術館では、関連企画として
先週末にレクチャーツアー「絵画の水と地図」を開催しました。
画家・批評家の古谷利裕さんをお招きして、
講義、まちあるき、ディスカッションという三部仕立ての長丁場。
第1部では、館内に椅子とホワイトボードを並べての「講義」です。
創作における「表現」という言葉について、「変換」という概念について。
マティスの《赤い部屋》を例にして、色や形の機能や、その構造について学びました。
大学の授業を懐かしく思い出します。
第2部のツアーでは、参加者とともに「OPEN STUDIO/ON AIR」のスタジオを巡ります。
奇跡的に涼しく、尾道の風景を横目に路地を進み、
大学生達のシェアハウス兼アトリエや、クリエイティビティ溢れる酒屋さん、
廃屋を利用した作品などを見てまわりました。
第3部では、古谷さんの作品を、スライドで紹介していただきながらのディスカッション。
構築的な色や線が印象的です。
尾道に住む若いアーティストたちに、それぞれポートフォリオも紹介してもらいながら、
質疑応答を交えて話しました。
はじめに置く“一筆目”のこと。
それぞれの線の機能と響き合い。
文章を書くときと、絵を描くときの方向について。
分析する「フレーム」のこと。
「絵画」と「行為」の違い・・・等々
絵画と言葉という、相容れないものに同時に思いを馳せながら、
様々な思考を、スープのように煮込んだ夜でした。
終わってみると、21時近くになっていました。
翌「OPEN STUDIO / ON AIR」最後の夜にも、
古谷さんを含めて色々な方に集まっていただき、
丁寧な言葉で、多くの気づきや、刺激をやりとりしてくださったようです。
古谷さんのブログ「偽日記」はこちら→ http://d.hatena.ne.jp/furuyatoshihiro/
このたび、ご参加・ご協力をいただいた皆様、本当にどうもありがとうございました!
古谷さんの尾道での体験と、古谷さんが私達に残した示唆が、
これから新たな展開を見せてくれることを願っています。
音楽鑑賞の場として、所蔵のチェンバロを中心としたバロックコンサートを定期的に開催するほか、ジャズやクラシックなど様々なジャンルの演奏家によるディナー付きコンサートも企画・開催しています。併設するフレンチレストラン「ロセアン」では、ランチ・ティータイムはもちろん、美術館閉館後もゆったりとした空間でライトアップされた庭園を眺めながらの本格的なディナーが楽しめます。