
更新日:2013年7月15日(月) 【nakata Labs なかたラボ】
本日、ガーデントーク「絵の中の庭」を開催しました!
ガーデントークはこれまで、春から冬まで、美術館の庭園や・・・
裏山で・・・実物の植物に囲まれて、開催してきました。
講師は浜田展也さん。
ずっと、高校の先生でありながら、研究も続けてこられた植物のエキスパートです。
今回は「Paysages 風景画」を開催中の展示室の中で開催します。
絵に描かれた植物や自然について伺っていきました。
これは、このレクチャーのきっかけとなったコローの風景画です。
これまでのガーデントークで先生を招いた際に、この作品の季節はいつですかねえ、と何気なく尋ねたところ、
・水辺に生えているのは葦。
・その葦が長く伸びているので春ではない。
・水辺に生えるハンノキやヤナギの仲間は、落葉が早い。
などの推理を重ね「夏の終わりから秋の初め」というかなりピンポイントなお答えをいただいたのです!
美術史的な情報を集めるのとは違う、科学的なアプローチで絵のことが分かる。
それもマテリアルやテクニックの事ではなく、描かれた内容に迫っていける。その感覚がとても新鮮でした。
いつか絵の話を聞いてみたい!と思っていたのが、今回の「Paysages 風景画」展で、実現したという次第でした。
(あと、今の時期は外が暑い&蚊が出る・・・という理由もあります(笑)
ちょっとした絵の具のタッチで、これは葦だと、ぱっと分かってしまう先生は本当にすごいです。
そして植物を知っている人に、そうと伝わるタッチで描いたコローも、やっぱりすごい。
それでも、中根寛《刈り込まれた樹のある風景》の前では、さすがの浜田先生も「う〜〜〜ん」と腕組み。
「ここまで刈り込まれちゃうとなあ・・・」と。
自然な枝ぶりでないと、なかなか難しいですね。
しかしこの植物は何々です!と名前までは分からなくとも、例えばその土地特有の気候に合わせた植物の組み合わせがきちんと描かれていたり、
絵の内容を、意味や心情的なもの、演出、効果でなく、徹底してサイエンスの知見から分析していく、という事自体が、とてもスリリングでした!
また意外だったのは、森谷南人子の《伯耆大山》の木々は、けっこうイメージで描かれていること。
てっきり写実に基づいているのだろうな、とイメージで考えていました。
そして逆に、情緒的な雰囲気の小林和作の《志賀高原の秋》や《春の湖》は、むしろ実際に近いということでした!
特に、この《春の湖》ふんわりとグレーがかったようなピンクは、実際のブナ林の芽立ちの色なんだそうです。
冬が明けて、これからいよいよ緑になるぞ!という直前の、2〜3日しか見られない、
何とも言えない美しい色だそうで、それをよく表しているように見えるとのことでした。
和作の、鮮やかで主観的な色使いの、本当の意味を知ったような気がします。
また印象的だったのは、尾道の風景にまつわる話です。
この辺りの山に生えているのは、基本的にはカシ、アラカシなどがすごく多いのだそうですが、
しばらく前は、アカマツの林だったそうです。
確かに、1961年の中川一政の《塔(尾道)》では、細かい描写はないのですが、針葉樹らしい濃い緑で山が描かれています。
そして1987年の野田哲也の《Diary: Aug. 26th '87, in Onomichi》では、松とカシが混在していているのが、木々のシルエットや明暗によって見えてきます。
時代によって、同じ尾道でも見られる植物は違っていて、それが確かに作品に現れているというのがとても面白かったです。
ビュフェの作品《花咲く農家》では、
家の後ろの木立が、不自然に見えるけど、実はフランスの田舎に見られる剪定の仕方である、とか
家の手前に生えているちょっと不思議な花も、葉の大きさや色、花の付き方からして、花カンナだろうと。
そうした暖かいところの植物が、わざわざ植えられているから《花咲く農家》という主題で描いたのだろうということ。
そして、たとえ花の名前は分からずとも、この作品にはちょっとした違和感がフックとしてあるから、魅力的なんだろう…と話が展開していきます。
なるほどー!と膝を打ちたくなる瞬間でした。
この他にも、書き尽くせないほど、たくさんのお話を聞けてとても楽しかったです。
ガーデントークで先生と歩く庭が、いつもと全然違って見えるのと同じように、
風景画も全く違うベクトルで見ることができて、大変実りのある時間でした。
浜田先生、そしてお集まりいただいたみなさま、どうもありがとうございました!
次回の nakata Labs なかたラボは
7月28日[日] 14:00〜16:00
「わたし」が見ている風景と、隣にいるあの子が見ている風景は、
どんなふうに違っていて、どんなふうにつながっているのでしょう。
あなたにとっての風景を、Tシャツにペイントして、一緒に身にまとってみましょう!
親子ワークショップと書いていますが、きょうだい、カップル、お友達同士でも、大歓迎です◎
ぜひご参加下さい!!
更新日:2013年6月12日(水) 【nakata Labs なかたラボ】
ご近所の幼稚園から、みなさんがなかた美術館へ来てくれました!
今日はこんな「額」を、ひとりずつ手に持って、色んな絵を見ていきました。
ちなみに、ルオーの描いた《ソランジュ》という作品の額です。
描かれた人や花、町、となりの友達も。
描かれた人の真似っこしている先生を、額の中に入れてみたりしました。
なんだかよく見えるような気がします。
額が違うと、絵の印象も全然ちがいますね。
「額」は、持って帰ってもらいました。
きっと、外で、空や街並みなどを見てみるのも良いですし、
自分の絵や、写真なんかを入れてみても楽しいと思います。
これを使って、色んなものを見てみてくださいね!
更新日:2013年6月9日(日) 【nakata Labs なかたラボ】
本日、nakata Labs のワークショップ「Museum books ミュージアムブックス」を開催しました。
美術館の中で、美術にまつわる言葉について、一緒に考えてみましょう、ということで、
ルオーの作品について書かれた文章を題材に、その書き直し!にチャレンジしました。
講師は、尾道の光明寺會舘を拠点に、zine(小冊子)を発行する「AIR zine 編集室」から。
福山大学の助教で、メディア論がご専門の阿部純さん。
そして、福祉施設職員で美学がご専門の津口在五さん。
ちなみに、お二人とも、そして参加者の方も、「ルオーのことは全然詳しくない」という状態でスタートです!
まずは展示中の、年代の違う4つの展示中のルオー作品を見て、
「作品だけ」を見て読み取れることを、カードに書き出していきます。
解説パネルは外してますが、キャプションだけは残してあります。
「何が描かれていると思いますか?」
「描き方の特徴は?」
「全体の印象は?」
という3つの質問を用意しました。
例えば「ソランジュ」という作品では、
色の鮮やかさから“南国”
笑顔なので“うきうきした若い女性”
とても執着して描いているいるように見えるので“恋人や愛人?”
といった言葉が出て、見る人によって色んな物語が想像されていること、
そして、私だけは「答え」的なものを知っていて、みなさんのような発想ができなくなってしまっていることもよく分かりました。
続いて、いよいよ文章の書き換えです。
批評家の小林秀雄氏や、哲学者の谷川徹三氏がルオーについて書いた文章を、
阿部さんと津口さんの、分かりやすく、かつ鋭いリードのもと、
みなで読みながら、ふせんを貼って書き込みをしていきます。
これってカタカナ語じゃなくてもいいのでは?とか、
難しい抽象的な言葉を解体してみたり、
日本語から日本語へ、わかりやすく「翻訳」してみよう!という感じです。
それぞれの書き込みを共有してみると、
「ここは分かりづらい!」とか「この言い方はもっと説明してほしい!」と感じる部分は、けっこう共通していること、
「絵」の説明にどれほど言葉を費やしても、(逆に言葉が多いほど?)わかりにくいこと、
“〜のような”といった比喩や暗喩を使わざるを得ないということが浮かび上がってきました。
最後は全員の書き込みがされた文章を、本としてつづりました。
お高くとまりがちな美術批評に対して、難しい!よく分からない!って言い合えて盛り上がったり、
何だかんだと言いながらも、ルオーに対する、それぞれの著者の熱い思いもよく伝わってきましたし、
ワークショップを終えてから作品を見ると、改めて発見できることがあったり、さっきは首をひねったことに納得できる部分があったり・・・。
そして私も、「学芸員」としての普段の解説や、展示パネルの文章が、いかに見る人の作品への理解を左右しているのかを実感して、その責任を感じました。
たいへん実りの多い時間でした!
参加してくださった方、阿部さん、津口さん、どうもありがとうございました。
今後も、このワークショップには色んな展開ができる可能性があるなあと思っています。
どうぞお楽しみに!